今日はお料理教室でよくある質問、「ベーキングパウダーと重曹(ベーキングソーダ)の違い」ついて、重い腰を上げて書いてみました。科学者としてでなく料理家として理解している程度ですが、だいたいこんな感じです。
重曹とは
重曹は炭酸水素ナトリウム(アルカリ)で、酸性の液体と混ざると炭酸ガスを発生し、生地を膨らませます。ここで大事なのは「酸性の液体」という部分です。水や牛乳など酸性でない液体を加えても、炭酸ガスは発生せず、生地は膨らみません。言い換えれば、常に酸性の液体を加えなければならないということです。
でも例え酸性液を加えても、必要以上に加えると、反応せずに残った重曹は苦味を残してしまいます。ですから、適度な分量の重曹を加えることが大切です。
また液体を加えるとすぐに反応してしまうので、焼き菓子を作る場合など、すぐに焼き始める必要があります。
ベーキングパウダーとは
重曹に対し、酸性の液体無しでも膨らませられるようにしたものが、ベーキングパウダーです。重曹に酸がすでに加えられているので、牛乳や水を加えただけでも、生地を膨らませられる、重曹をうまく調節したものです。ベーキングパウダーには他にコーンスターチが入ってますが、これは容器の中でのアルカリ性と酸性の反応を抑えるためなどの理由から加えられています。
最近「アルミニウムフリー」という言葉をよく聞きますが、これはベーキングパウダーに加えられている酸の種類についてです。今まで酸の材料としてよく使われていた硫酸アルミニウムカリウム(焼きミョウバン)には、有害なアルミニウムが含まれているため、最近はアルミニウムを含まない酸で代用されています。例えば私がよく使うラムフォードのベーキングパウダーでは、リン酸カルシウムが使用されています。
「ダブルアクティング」ベーキングパウダー
ベーキングパウダーのパッケージによく「ダブルアクティング」とありますが、これは種類の違った酸を加えることで、別のタイミングで炭酸ガスを発生させるので、2度に分けて膨らますことができるという意味です。1回目は水分を加えた時で、2回目は加熱した時。こうすることで、重曹と違い一度に全てが反応してしまわないので、膨らまないという失敗が少なくなります。最近は、何も書いてなくても一般的にダブルアクティングです。
どちらを使ったら良いのか?
ベーキングパウダーか重曹、どちらを使用したら良いかは、使用する材料で決まります。一般的にはベーキングパウダーを使えば良い場合が多いですが、レモン汁やヨーグルトのような酸性液がたくさん入る場合は、先に述べた理由で重曹を使います。もしここでベーキンパウダーを使うと、膨らむには膨らみますが、出来上がった菓子に、酸味が強く残ってしまいます。
参考までに、酸性の素材には、以下のようなものがあります。
レモン、ヨーグルト、バターミルク、蜂蜜、ブラウンシュガー、ココアパウダー(ダッチプロセスでないもの)、果物
なぜ両方使うレシピがあるのか?
酸度が高いレシピの場合は重曹を使うのが一般的ですが、この反応から作られる炭酸ガスだけでは膨らませるのに十分でない時に、ベーキングパウダーも追加されます。それから多少の酸味を残したい場合なども、ベーキングパウダーと重曹の分量を調節して、両方使います。
また重曹は膨らませる以外に、焼き色を加える効果があります。そのため、ベーキングパウダーだけでも十分な場合も、重曹を少し加えることがあります。どら焼きは、苦味と焼き色を加えるという重曹の特徴を使った良い例であり、逆にシフォンケーキなど白く仕上げたいものには重曹は加えません。重曹は、焼き色が香ばしさが大事なクッキーなどに、ベーキングパウダーは、ケーキやビスケットなどに使われるのは、そういった理由からです。
まとめ
というわけで、ベーキングパウダーと重曹をただ単純に置き換えることはできないし、省くこともできないことがよくわかったと思います。理想の焼き色、ph値、膨らみなどを得るために、素材の性質、グルテンの量、焼き時間、並べる間隔などを考慮した上で生まれたレシピ、両方使われているレシピはそれなりの理由があるわけです。ベーキングは料理ではなく科学で、レシピ通りに正確に作るのが必要だと言われているのも、そのためで、単に量を増やせば膨らむわけでなく、逆効果になることもあるんですね。多少は、頭の中スッキリしたでしょうか?
次のポストでは、この原理を使った「化学反応を使った、パーフェクトなパンケーキ」を紹介する予定です。
nomu
クリントンストリートベイキングカンパニー風のパンケーキのレシピを探してこちらに辿り着きました。
長年のお菓子づくりの疑問が解決しました!
原理を理解した上で、
おすすめのパンケーキのレシピを理科教師のじーじと、子どもたち作ってみたいと思います。
YokoDesign
良かったです(笑)!