今日は当たり前ですが、久しぶりというか1年ぶりの誕生日でした。嬉しいような悲しいような複雑な心境です。昼間、一人の時間があったので、いろいろなことを考えていました。
そしてその1つが、去年のちょうど今頃いた母と二人のイタリア旅行です。去年はローマで誕生日を迎えたんだったことを思い出しました。
日記のように書き留めた旅行記、最後の最後が書き終えられてなかったのですが、今書き上げました。自分と母のために書いたものです。また来年の誕生日に読もうと思います。
2016年4月25日
子供ができるとライフスタイルが変わるというのをひしひしと感じる時は、やはり私にとっては旅ができなくなったこと。この旅というのは温泉旅行とかのことではなく(こちらに温泉なんてありませんが)、私の人生の中でとても大事なバックパックを背負ってのんびりと行く旅のことです。でもそんな日々をおくってきた私にも、この度、そんな機会がやってきました。子供達も少し大きくなったということで、2週間弱と短い期間でしたが主人と義理の両親に子供達を任せ、久しぶりに母と二人で旅行をすることができました。母との二人旅は、プラハ以来10年ぶりです。せっかくのその思い出、忘れない内に書き留めておこうと思います。
April 17, 2015
11:45 pm. いつまでたっても貧乏性が抜けず、今回もボストンからローマまで一番安かったトルコ航空での旅。乗り継ぎはもちろんイスタンブール。やはり安いだけあり問題点だらけである。乗り継ぎ時間が6時間、ボストン発がなんと真夜中、そしてイタリア着もほぼ真夜中。文句を言っても仕方がないので、機内食のトルコ料理を食べ、なかなか手に入らないトルコビールとトルコワインをたっぷり飲んでしばらくトルコ気分に浸ることにした。
April 18, 2015
11:30 pm. なんとか無事にローマに到着。荷物をとるともう真夜中過ぎ。明日の早朝飛行機でジェノバに飛ぶので、今夜はこの近くにホテルをとってあったのだが、外に出てタクシー乗り場に行ってみると長蛇の列だというのにタクシーはほとんどやってこない。随分待ってやっとタクシーを捕まえても、金にならない短距離の運転はしてくれないっと言われ、さんざん待ったあげく他にいたもう一組のアメリカ人といっしょにほぼローマ市内までの同料金を払い、なんとかホテルまでたどり着いた。
April 19, 2015
2:30 am: ボストンを発ってからいったいどれくらいの時間が過ぎたのかもうよくわからなくなっていたが、やっとベッドの上で寝ることができた。とにかく着いた!
6:30 am: 朝8時半のジェノバ行きの飛行機に乗るため、たったの4時間の睡眠。それでも素晴らしい朝ごはんのビュッフェがあり(疲れていて写真もとれていない)、なんとなくイタリアにいるんだっという気分になってきた。(実はこの後、時計が少し遅れていたため、ホテルからの飛行場行きシャトルバスに乗り遅れ、冷や汗をかく羽目になった。)
9:30 am: ジェノバに到着。まずはシャトルバスでジェノバの中心地に向かう。今回の最初の目的地はユネスコ世界遺産にもなったリグーリア海岸のチンクエ・テッレ(Cinque Terre)だが、せっかくジェノバを通り過ぎるので、少し寄り道して行くことにした。というのも大きな理由(それほど大きくないが)が2つ。まずはここは小さい頃見たアニメ「母を訪ねて三千里」の舞台となった地であるということ。そしてあの有名なジェノベーゼバジルソースの発祥の地ということ。
早くから港町として栄えたジェノバはイタリアの中でも古く、細く迷路のように入り組んだ街並がある。あいにく今日は日曜日でほとんどの店が閉まっていて町の感じがつかめなかったが、港町としての香りをなんとなく感じることができた(ちょっとマルコの世界も感じることができた!)。ほとんど何もやっていない中、由緒ありそうなお菓子屋を見つけたのでそこで一番人気というパナトーネのようなずっしりしたパンを買った。レーズンとオレンジピールがたっぷりで美味しかった。
12:15 pm: ジェノバ探索を終え、目的地チンクエ・テッレに向けてブリニョール (Brignole) 駅を出発。
3:30 pm: 約2時間半の旅を終え、ついにチンクエテッレに到着。チンクエテッレとは「5つの土地」の意味で、モンテロッソからリオ・マッジョーレまでのリグーリア海岸に面した険しい海岸にある5つの村を指す。この切り立った崖の合間に建てられた色とりどりの家と自然の調和がとても美しく、名所はその景色はもちろんだが、同時に村々を結ぶトレールにもある。選んだホテルは5つある村の内のコルニリア(Corniglia)という唯一海沿いではなく丘の上にある村なので、観光客も少なめでとても静か。駅から5分ほど歩いて予約したペンションに到着する。庭にはレモンの木がたくさんあり、海の景色がきれいだ。そして玄関に入ると、絵に描いたようなとっても明るくフレンドリーなイタリア人のオーナーにウェルカムされ、疲れも一気に吹き飛んでしまった。”チャオ”。バックパックを下ろし、シャワーを浴び、庭でカプチーノを飲みながら遠くまで広がる海の景色を楽しんだ。なんて贅沢な時間。
4:30 pm: 疲れから回復したので、日が暮れてしまう前に隣村のマナローラ(Manarola)を見学することにした。今晩は歩く元気がなかったので、電車で移動。車内の窓からマナローラの村が見えてきて、あまりのかわいらしさに息をのむほどだった。話には聞いてはいたが、本当に全くと言って良いほど平らな土地がなく、見事に崖の合間をぬってカラフルは家々が建てられいるマナローラの景色。高台から見るとまるでミニチュアのおもちゃのように可愛らしい。疲れているからか、潮風に吹かれていると夢の中にいるようで、なかなかこの状況を実感できないでいた。いい意味で。
そんな時間を少し味わってから、この小さな村を探索し、早めの夕飯をとった。やっぱりここではシーフード。前菜にタコとジャガイモの温サラダを、そしてここの名物パスタトロフィエ(Trofie)をバジルのジェノベーゼソースで和えたもの。ムール貝のパスタも。それから生産量が少ないためここ以外ではあまりお目にかかることのできない地元のワイン。ボストンを出て初の本格的イタリア料理のお味は、思ったよりずっとさっぱりしていて美味しい。そしてなんとこの白ワインと合うことか!余ったワインを持ち帰り、日が暮れるまでホテルの庭から海を見ながらチビチビと飲んだ。
10:30 pm: 本格的なイタリアの初日は長〜く感じられた。今日はぐっすり眠れること間違い無し。
April 20, 2015
8:00 am: 外にセットされたテーブルで朝ごはん。シリアル、クロワッサン、コーヒーケーキ、チーズ各種、生ハム各種、フルーツ、コーヒーととても豪華。のんびりとした朝食をとり、いざトレールに向けて出発。一番綺麗で人気のある海岸線沿いのマナローサまでのトレール(No.2)は何年か前の台風の被害を受けて以来まだ修復中で残念ながら歩くことができず、反対のヴェルナッツァ(Vernazza)に向けて歩くことにした。
ヴェルナッツァは5つの村の中で一番チャーミングと言われている村で人気がある。トレールは綺麗に舗装してあり、激しい登り降りもなくとても歩きやすい。途中人里離れたところにもぽつんぽつんと家があり、こんな不便なところでどういう生活をしているのかとても気になりながら、おもわずチベットを思い出してしまった。
1時間もすると(多分)ヴェルナッツァが遠くに見えてきた。突き出た陸地に小さな家々が密集している。一気に駆け下りて行こうとすると、その手前にカフェを発見。急ぐ旅でもないので休憩がてらここによって、地元で豊富になっているレモンで作ったお酒レモンチェロとレモネードを一杯ずつオーダーした。まさに地中海の味!をゆっくり味わい、すばらしい景色と心地よさに後ろ髪を引かれながらもトレールに戻り、目的地ヴェルナッツァへ急いだ。
ヴェルナッツァでは、小道をあてもなく歩きながらゆっくり散歩をした。実際村自体は本当に小さく、ほとんど見るものもない。やはりこのあたりの魅力はトレールから見るこの景色にあると思う。多くの観光客は電車でそれぞれの村を見学するのみだが、やはり村自体よりトレールを歩いて見るその景色に見どころであると思うので、ここに来ることがあるなら、ぜひ歩くことをおすすめする。
4:00 pm: 本当はここにもう1泊くらいしたかったけど、スケジュールが詰まっているので、今日はもうこれからフィレンチェに向かう。ペンションに戻ると荷物をとって、オーナーのおじさんに見送られながら、ラ・スペツィア(La Spezia)経由でフィレンチェへ。約2時間の旅。
6:00 pm: フィレンチェに到着。思ったより小さな街で全て歩いて行動できそうだ。駅からホテルまでも歩いて10分ほど。ホテルは築500年以上の古い建物の一部を使って経営している小さなペンション。ホテルの人達はみんなとても親切で予約した部屋をアップグレードしてくれたおかげで、大きな部屋が2つくっついたスイート。壁の色もピンクでうまくモダンとアンティークが組み合わさったデザインで、古都フィレンチェにふさわしい。シャワーを浴びてから、ゆっくりカプチーノを飲んで、まずはこの部屋をゆっくり満喫し、ホテルの屋上に上がって真横に見えるドゥオーモの景色にしばらく見とれた。
8:00 pm: そろそろ疲れもとれてお腹も空いてきたので、ホテルですすめられたレストランへ急ぐ。今夜のメインは豪華にフィレンチェ名物のTボーンステーキ。かなりのボリュームだったが赤ワインを飲みながら母と二人ですっかり平らげてしまった。たまにはステーキもいいものだが、おかげでお腹がはちきれそうだ。でもイタリアに来てからまだ一度も口にしていないジェラートがどうしても食べたくて、しばらくお腹を空かせるために一生懸命歩いた。
あまり効果はなかったけど、それでも初のジェラートを口にすることにした。フレーバーはリコッタとチェリーアマレットの2種類を選択。こんなにあるフレーバーから2つ選ぶのは至難の技であるが、アメリカではあまり見受けない味を選んでみた。それにしてもクリーミーでいてさっぱりしていて満腹でも何個でもいけそうである。ジェラートを片手に、ぶらぶらと革製品の店を見ながら、ホテルへと戻る。少しずつイタリアにいるということを実感し始めてきた。今日心に決めたことは、滞在中毎日ジェラートを食べること!
10:00 pm: 就寝
April 21, 2015
8:00 am: 今回のホテルの朝ごはんは、チケットをくれて近くのカフェで食べるというスタイル。それはそれで面白い。オレンジジュース、卵とハムのクロワッサンのサンドイッチとチョコレートクロワッサン。これにカプチーノ。朝からまた食べ過ぎてしまった。常連らしいおじいさんがコーヒーを飲みながら新聞を読んでいる風景をみてたら、なんだか自分もローカルになった気がしてきた。旅行中のうれしいひと時!
9:00 am: ドゥオーモに行くともう既にすごい長さの行列。何事かと思ってしまった。というのも今までの私の旅っというのは僻地が多かったせいか、列なんて見たことがない。確かに、イタリアのフィレンチェと言えば観光地中の観光地だからしょうがないかもしれないが。並んでみると、列は割と早くすすんで助かった。1436年に140年の歳月をかけて完成された大聖堂の中は、広くてとても立派である。クーポラは混んでいたので、かわりに空いていたお隣の塔の上に登ってフィレンチェの景色を見下ろした。赤い屋根瓦が一面に広がるこの統一感ある美しい街をしばらくじっと眺め続けた。
noon: サン・ロレンツォ マーケットといういわゆる中央市場が街の中にあり、いろいろな食材が売られている。私の旅ではどこに行っても地元のスーパーなりマーケットなりに行くことが歴史的建物を見るよりも優先順位に立っている。そこの食文化を知るのがその国を知る一番の方法だと思っているからだ(もちろん単に食べることが好きだからというのもあるが)。この市場、肉、魚、野菜、スパイス、チーズ、ソーセージ、ドライフルーツ、コーヒーなどどんな食材も揃えられそうである。いろいろ買いたかったが、なんといってもバックパック旅行者にとって荷物は増やすことはかなりきついので、買い物は諦め、この中で食べ歩きをすることにした。
まず最初に目についたのが、魚屋。そこで大きなエビやイカを揚げている。早速揚げたてのエビを一皿と白ワインをオーダ。カリっとうまく揚がったエビは頭までおいしく食べられる。そしてこのシャビっとした水っぽい白ワインもさっぱりしてランチにはパーフェクトである。出来立てを両手でムシャムシャとかぶりついた。
次に目についたのがオリーブ屋だ。いろんな種類のオリーブが並んでいる。私が好きな一番生に近いグリーンのオリーブを量り売りで袋に入れてもらった。ちょっと大げさだが、今まで食べたオリーブの中で一番美味しかった(モロッコで食べたシワシワのブラックオリーブがその次かな?)カリっとして歯ごたえは少し青梅に近い。そしてほどよいコクがある。またまたワインが飲みたくなった。
オリーブをかじりながら、今度はお目当てのDe Nerbone という屋台を探す。ここのランプレドットと言うもつ煮込みを挟んだパニーニが食べたかったからだ。イタリア系の義理母が時々トマトと煮込むトリッパは作ってくれるのでなんとなく味は想像できたが、気になっていた。探し当てると地元の人と観光客でいっぱいである。1つ買って食べると、おもったよりあっさりしていて食べやすい。こんどは赤ワインと一緒に食べることにした。ワインが水みたいな値段なので、水のように気軽にオーダーできて、本当に嬉しい限りである。そして最後にエスプレッソで締めくくった。
3:00 pm ホテルに戻ってカプチーノで早めの休憩。
5:00 pm: フィレンチェ最古の橋、ヴェッキオ橋の向こう側にある最近オシャレな地域オルタルノ(Oltrarno)へ向かう。歩いて30分もしたら、ギャラリーやオシャレなショップ、トレンディーなレストランやワインバーが目に入ってきた。オルタルノだ。特に目的もなかったがまたちょっと雰囲気の違うこのあたりをぶらぶらと楽しんだ。
6:00 pm: 休憩にワインバー (Il Santo Bevitore)によって、チキンレバーのパテに生ハムがのったブルスケッタと赤ワインをオーダー。そしてそのままハシゴしてお隣のレストランへ(ワインバーと同じ経営らしく、名前もいっしょ)。お腹があまり空いていなかったので、カウンター席でスープとパンだけ食べさせてもらうことにした。スープはフィレンチェの名物でミネステローネにパンが入ったリポビータ。私の大好きなスープだ。カウンターの向こうでは生ハム専門のお兄さんがオーダーが入るとスライスしている。すると眺めていた私たちに切れ端を持ってきてくれた。やわらかくて生ハムというより生肉っぽかったけどさっぱりして美味しい。カウンターに座って得した!
食後はすぐ近くにあるフィレンチェ1と言われる有名なジェラート屋, Gelateria La Carraia へ。今日のフレーバーはピスタチオとまたまたリコッタ。確かに美味しかった。ジェラート、毎晩食べる癖がつきそうである。
9:00 pm: ゆっくりアルノ河沿いを散歩しながら橋を渡り、また旧市街に戻ってきた。こちらの夕飯は遅いだけあって、まだまだレストランは人で賑わっている。いつものプラザから曲がってホテルがある路地に入るとパイプオルガンの演奏が聞こえて来る。近づいて見ると、それはホテルの迎えにある小さな教会で、パイプオルガンのコンサートを行っていた。っといっても、お客さんはほとんどいない。入ったらちょうどヘンデルのメサイヤが流れていた。フィレンチェの教会でこんな曲を聴くとなんだかとても神秘的に聞こえ、しばらくそこに座って聞き入った。
10:30 pm: ホテルに戻って、シャワーを浴び、ハーブティーでリラックスしてからベッドに潜り込む。
April 22, 2015
8:00 am: いつものカフェで朝ごはんをすませると今日は予約してあった「ワイナリーと食のツアー」へ。今回の旅でかなり迷ったのは、レンタカーをするかしないかということ。トスカーナ地方のワイナリーをずっと車でドライブしたかったのだが、イタリアで運転するのは難しいといろいろ聞いていて、今回はツアーに入ることにした。
9時にフィレンチェを出発し、トスカーナの中央に位置する地域キャンティ(Chaniti)にある古いワイナリーGuicciardini を見学。そこではオリーブオイルも作っているのでその作業場も見学させてもらった。見学の後はワインとオリーブオイルのテースティング。トスカーナのオリーブはまだ熟される前に収穫するのでオイルの味に少し良い意味での苦味があるのが特徴らしい。バージンオリーブオイルと言われるには、収穫してから24時間以内に低温で抽出(コールドプレス)しなければならない。そのオイル、パンにたっぷりつけて食べてみると本当に美味しい。オイルという感覚ではなく、フルーツジュースといった感じである。手に塗ってみてもヌルヌルしないのだ。安いオイルというのは、この絞りきったオリーブをさらにしぼったり他のオイルと混ぜたり、高温で抽出したりするので、味が落ちるのだそうだ。
12:00 pm 途中お昼には丘の上の素敵なレストランLa Cantinetta di Rignana でフルコースランチとワインペアリング。豚の脂肪のみを塩漬けして作ったとろけるようなハムや生トリュフなど珍しいものもいろいろ試食できた。ローズマリーでシンプルに焼いたチキンやソーセジもなぜだか本当に美味しい。素材の良さだろうか?それにしてもイタリア料理でふんだんにハーブを使うわけがよくわかった。ハーブ特にローズマリーは雑草のようにどこの家先にも生えているのである。
2:00 pm その後自由行動でキャンティの中でも大きな街グレーヴェ (Greve)でコーヒー休憩。小さな街だが、これが郊外にある街なんだなっと興味深かった。ガイドさんはこの街で次のワイナリーで食べるためのチーズやサラミを買い込んでいた。
4:00 pm お腹もいっぱいだが、最後のワイナリー Cinciano へ。ここではヴィン・サント(VIN SANTO)というイタリアのデザートワインも試飲した。これはこの辺りのビスコッティに似たカントゥチーニクッキーを浸して食べる。浸したクッキーはほどよい固さになり、ほんのりとしたお酒の香りが加わり、とても美味しくなった。
8:00 pm: 今日は美味しいものもいっぱい、ワインもいっぱい飲んで気分は最高。ホテルに帰ってシャワーを浴び、食後の運動を兼ねてすぐ近くのウフィツィ美術館のシニョリーア広場まで散歩した。夜の広場もヴェッキオ宮殿入口周辺の彫刻がライトアップされてまた神秘的で綺麗だ。そしてその横にはフルートを吹くミュージシャンが。この幻想的な雰囲気の中、随分長い間座ってその音楽に聞き入っていた。いつまでも聞いていたいという気持ちだったがそうもいかず、重い腰をやっと上げると、そのまま橋が見える川岸まで歩いて少し散歩した。そしてやっと小腹が空いたので、ホテルの帰り道にあるレストランで、ワインとスープの軽食をとる。今晩のスープは豆とファロ入り。
11:00 pm: フィレンチェ最後にふさわしい夜だったと、まだあのフルートの奏でを頭に、深い眠りついた。
April 23, 2015
8:00 am: やっと店員さんとも顔なじみになれたカフェでの朝食も今日が最後。ゆっくりと味わいながら今日はミュスリとヨーグルト、オレンジジュース、デニッシュとカプチーノをオーダーした。今日のスケジュールは次の目的地へ移動だけとかなりオープンなので、食後もう一度フィレンチェの街を歩き回った。
1:00 pm: フィレンチェから電車で約1時間、トスカーナ東部にあるCastiglion Fiorentinoに到着。めったに観光客は来ないし、地元のイタリア人でさえあまりしらない町である。そんな町に私たちがやってきた理由は、ヴィラ(villa、お金持ちのお屋敷のようなもの)に一泊するためである。ボストンの図書館で見つけたイタリアの写真集でこのヴィラ(Polvano)を見つけて、すぐに行ってみたくなった。やはりトスカーナに来たら一度はヴィラに泊まってみたかったが、車もないので半ば諦めていたところ、公共機関を使ってなんとかたどり着けるこのヴィラを見つけることができたのだ。位置的にもちょうどフィレンチェとローマの間と便利なところにある。
駅に着くと、あらかじめ予約しておいたタクシーがちゃんと待っていた(驚くことに!)。車で数分もすると、もうほとんど家はなくなり、周りは芽吹きが綺麗な木々が広がった。時々何件かの家を目にするくらいは、何も存在しない。やがて道が坂になり、丘の上を登っていく。しばらくすると車が泊まり、ホテルに到着だ。約15分。立派な石造りの玄関を入ると老人のオーナーに迎えられた。この老人は蝶ネクタイをして、こんな田舎町にはとても不釣り合いなくらい紳士的で、とても丁寧に迎えてくれた。
部屋を案内してくれる途中に通る階段や踊り場など重々しく、今までにこんな家を見たことがない。古い大きなビルは知ってるが古い家というのはあまり知らない。2階の奥まで来ると、大きな鉄の鍵で扉を開け、私たちの部屋に通された。真っ暗な廊下と対照的に、部屋の中は窓から明かりが差し込んで明るく、真っ白いシーツやタオルがこの古い部屋にとても似合っていた。オーナーにお礼を言って部屋に入ると、まずは荷物を降ろして、しばらく部屋を眺めたり窓の外の景色を眺めたりと、遥々ここまできたことを実感して満足感にふけった。そしてフィレンチェで買って来たパニーニとワインで簡単な食事を済ませ、待ちきれずに外に出かけた。
2:00 pm: ホテルの敷地は広く、プール奥の方には昔チャペルだったような建物もある。母屋以外にもいろいろと小さな建物があり、この建物が建てられたころの生活や時代背景を少し想像してみた。難しい。プールは綺麗に掃除がしてあり、横には椅子も準備されていたが、泳ぐにはちょっとまだいくらなんでも4月は寒い。庭を散歩してしまうとやることもなく、ビラの付近を散歩することにした。新芽の緑が綺麗で、歩いていてもとても気持ち良いが、しばらく歩くとそれにも飽きてしまい、部屋に戻って昼寝をすることにした。やはり車がないとこのあたりの探索は難しいようだ。仕方がないが、今日は休養の日にすることにした。たまにはこういった日もいいのかもしれない。
7:00 pm: 昼寝から覚めてもう一度散歩をすると、いよいよ夕飯の時間がやってきた。まずはロビーのソファーに通され、そこでプロセッコをサーブしてくれ、メニューを渡された。高級レストラン並みのサービスである。メニューにはいろいろあったが、旅行者用にちゃんと用意してくれていたオリーブオイルのコースとトレビス(ラディキオ)のコース、そして選んでもらったキャンティの赤ワインのボトルを一本オーダーした。オリーブオイルのコースはたっぷりのオリーブオイルを浸したパンから始まり、オリーブオイルたっぷりのシンプルなパスタで終わった。オリーブオイルの質が問われるトスカーナならではのコース。そしてトラビスのコースもスープやパスタなど、私の大好きなトレビスがふんだんに使ってあり、どちらも大満足のいくコースだった。ウエイターとウエイトレスの親切なもてなしと、奥のキッチンで丁寧に手作りされる家庭料理を、この古いビラのダイニングルームに座って満喫していると、その時代にタイムスリップしたように思えた。
10:00 pm 夢のような1日が終わった。窓から月の光が見える静かな夜。自分が都会っ子だとは思はないが、あまりに静かで真っ暗な夜を過ごすと、自分の存在を忘れてしまうことがある。今夜はそんな日だった。
April 24, 2015
8:00 am: 目が覚めてからベッドの中でずっと楽しみにしていた朝食の時間がいよいよやってきた。ダイニングルームに入ると、想像をはるかに超えた品揃えのすばらしい朝ごはんが並んでいる。チーズは私の大好きなフレッシュリコッタチーズを始め、ゴート、モッツァレラ、ロマーナなど地元で作っているフレッシュなものがたっぷり。それ以外に生ハムや果物、トマト、そしてタルト、コーヒーケーキ、クッキーなどの焼き菓子が何種類もある。淹れたてのカプチーノと共に、何度も何度もお代わりしながら、とにかくお腹がはちきれそうになるまでたっぷり食べた。今回の旅行で一番おいしかった朝ごはんは、もう文句なくここであった。
食後、キッチンを見せてくれっと思い切って頼んでみたら、通じなくて料理を作ったというおばあさんが奥から出てきた。恥ずかしそうに出てきたおばあさん、このおばあさんが一人で全部作っていると聞いて、とても驚いた。こんなにたくさんの料理を一人で一体どうやって用意したのか?言葉が通じないながらも、手まねで美味しかったことを一生懸命伝えた。建物同様、おかしな表現だが、料理も歴史がいっぱい詰まった味がした。なかなかレストランではありつけないような味というか、そんな味だった。
10:00 am: このホテルのアットホームなおもてなしに温かい気分にさせられ、一晩しかいなかったが、少し離れるのが名残惜しい気がした。部屋に戻って荷物をまとめると、もう一度ホテル周辺を一周してお別れをした。そして気を取り直し、迎えのタクシーでもと来た駅に向かい、最終目的地であるローマへ向かう。約2時間の旅だ。
続きは、母と娘のイタリア旅行2:ローマ編へ
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