最近の食のトレンドの一つとして、プロセスがなるべくされていない、いわば加工の度合いを最少にした食品を求める傾向にあります。原材料の種類、加工の段階、添加物などがミニマムな商品を好むということです。もちろんそのままの素材、ホールフードをそのまま食べることの次にですが。
古代から存在しているプロセスフード、いわゆる加工食品は冷蔵システムがない昔、乾燥させたり塩漬けにしたりというシンプルな方法で保存を目的に始まりました。それが文明が発達し、缶詰を始めとするプロセスフードの技術がどんどん発展すると共に、より便利で美味しい商品の開発が始まります。そして合成着色料、合成保存料などのあらゆる添加物が加えられ、TVディナーを含む冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品などの便利な商品が次々と開発されました。そして当時、今程の情報が無い消費者の間でプロセスフードがブームになります。驚くことにマクドナルドやTVディナーを食べることがトレンドだった時代、母乳より粉ミルクの方が良いとされていた時代ももそんなに昔のことではありません。
それが近年プロセスフードが健康や慢性病に影響するとわかり、消費者の間でも食品に関する安全性への感心が高まってきました。そして80年代にはこれらの動きが、オーガニック、地産地消、スローフードなどという考えを生み出しました。そして今また新たにその後のトレンドとして、プロセスがミニマムで1つ1つの原材料にこだわった食品(Minimally processed food)がアメリカの知識人の間で流行っています。
その食品例の1つにチョコレートがあります。昔はカカオが入っているのかわからないような Hershey’s のチョコレートが好まれ、その後ギラデリ、ゴディバなど本当のカカオバターを使用したヨーロッパスタイルのチョコというのが少しずつ好まれるようになります。そしてその次はカカオの量が問われるようになり、パッケージにカカオの含有量が%で表示されるようになります。同時にフェアトレード(公正取引)やシングルオリジン(単一の産地)という言葉も大事なポイントになってきました。そうか、チョコレートも行き着く所まで行ったのかなっと思っていた矢先に現れたのが、マサチューセッツ州の Somerville が本社のTAZAチョコレートです。これはメキシコのチョコレートをモデルにしたもので、原材料がカカオと砂糖のみと一番シンプルな原料のチョコレートになります。チョコレートの質はカカオバターで判断されると思っていた私たちには全く矛盾したそのカカオバター無しのチョコは、食べ慣れないとクリーミーさに欠け物足りない気がしますが、次第にカカオの本来の味を吟味できることに気付き、クセになってくるから不思議です。実際のメキシカンチョコレートに比べ、砂糖の量を減らしカカオの質にこだわり丁寧に製作しているので、それが味に反映しています。そしてそれらにシナモンやバニラなどのスパイス、オレンジ、コーヒー、シーソルトなどのフレーバーを組み込んで10種類くらいのチョコレートが現在販売されています(ディスクタイプ)。また最近ではそれに少量のカカオバターが加えられたチョコレート(板チョコタイプ)も販売されるようになりましたが、味は普通のチョコよりはるかにメキシカンチョコに近いものです。ちなみに私が好きなフレーバーは、ソルトアーモンド入りのディスクチョコと85%と最もカカオの%が高い板チョコです。現在既に8カ国に輸出しているそうですが、このチョコのブームもさらに上昇し続けそうです。
質の良いチョコレートブームの一環として、チョコレートの原型とも言えるカカオ豆から外皮が取り除かれた部分、カカオニブもお洒落なアイテムになっています。多分気をつけていると、セレブなシェフがテレビでそんな言葉を口にしているのを聞くことでしょう。また取り除かれた外皮(ココア殻)も栄養素が残っているのでお茶に混ぜて飲んだりと、クリエーティブな使用方がいろいろと生み出されています。Mem というWatertown にあるお茶屋さんでは、ココア殻とチリペパーが入ったお茶など面白い組み合わせのブレンドティーを販売しています。個人的にはあまり美味しいとは思いませんが、めずらしくとても興味深い味でした。
話はながくなりましたが、実は先日私はTAZAチョコレートの工場見学に行ってきました。ずっと行きたかったのですが、家族5人分の予約がなかなかとれず、今まで行けずにいました。有料ですがが、チョコレートに興味がある方は一度訪ねてみると面白いかもしれません。紀元前2000年頃にメキシコ周辺で既に栽培されていたカカオにチリやバニラを混ぜて飲用していたものがチョコレートの発祥と言われています。そして4000年経った今、メキシコのチョコレート(もちろん紀元前2000年のものではありませんが)がブームになっていることが、なんだかとても興味深く感じられます。そうやって考えるとってもクールなチョコではないですか!
以上ですが、物好きな方はチョコレートティーの作り方を載せましたので、試してみて下さい。あまり美味しい物ではありませんが。
チャイ風チョコレートティー
材料: | |
小さじ1杯 | ココアニブ、手に入らない場合は無糖のココア |
1−2個 | カルダモン |
1/4本 | シナモンスティック |
少々 | レッドペッパー、もしくは鷹の爪 |
1カップ | 水 |
小さじ1杯程 | お茶の葉 |
牛乳 | |
砂糖 |
note:
軽量カップはアメリカの軽量カップを使用:
1 cup=240ml, 1/2 cup=120, 1/3 cup=80ml, 1/4 cup=60ml
塩は粗塩。バターは無塩バター。砂糖はグラニュー糖。小麦粉はアメリカのオールパーパスフラワーで、日本で一番近いものは中力粉にあたる。
作り方:
- ニブ使用:小さな鍋に全てのスパイスとニブ、水を入れて弱火で3−5分程煮立てる。火を止めて茶葉を加えて2−3分(お茶による)したら、コップに濾し入れる。好みで砂糖と牛乳を加えて頂く。
- ココアパウダー使用:鍋にスパイスと水だけ入れて同様に煮立てる。火を止めてココアを加えて良く混ぜたら、同様に茶葉を加える。*スパイスは使用しなくてもよい。
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